2025/09/28 13:51

今回は、アウトドアウェアの概念を覆し、ミリタリーからファッションシーンまでを席巻した革命的素材、**GORE-TEX(ゴアテックス)**を深掘りします。

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機能性ファッションがトレンドの今、GORE-TEXの歴史と構造、そしてミリタリーウェアの金字塔**ECWCS(エクワックス)**との関係を知ることは、古着を着こなす上で必須の教養ですよ!



🔬 GORE-TEXの仕組みと歴史



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1. 歴史:地下室からの革命


GORE-TEXの物語は、1958年にアメリカ・デラウェア州で、化学メーカー「デュポン社」に勤めていたビル・ゴアが妻ヴィーヴとともに自宅の地下室で会社を立ち上げたことに始まります。

  • PTFEの発見: ビルが着目したのは、「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」というフッ素樹脂。

  • ePTFEの発明(1969年): 息子のボブ・ゴアが、PTFEをある条件下で急速に引き伸ばす実験中に、PTFEが多孔質の膜になることを発見。これが「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」、すなわちGORE-TEXの核となる**メンブレン(膜)**の誕生です。

  • 「濡れないのに蒸れない」: 1970年代に入り、このePTFEを応用したGORE-TEXファブリクスが開発され、「濡れないのに蒸れない」という画期的な防水透湿素材としてアウトドア業界に革命をもたらしました。


2. 構造:夢のメンブレン


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GORE-TEXの最大の特徴は、その**メンブレン(膜)**の微細な構造にあります。

GORE-TEX メンブレンの孔のサイズ

対象サイズとメンブレンとの関係機能水滴メンブレンの孔(穴)よりも約2万倍大きい外部からの水の侵入を防ぐ(高い防水性)水蒸気(汗)メンブレンの孔よりも約700倍小さい内部の水蒸気(汗)は外部に通過させる(高い透湿性)


この構造により、激しい雨風から身体を守りつつ、ウェア内の汗による水蒸気は効果的に外へ逃がし、ドライで快適な状態を保つことができるのです。



🎖️ ミリタリーの金字塔 ECWCS GORE-TEX


GORE-TEXの機能性は、過酷な環境下で活動する軍隊にも採用されました。その代表がECWCSです。


ECWCSとは?(歴史)

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  • ECWCS (Extended Cold Weather Clothing System): 米軍が1980年代後半に開発・採用した「極寒冷地被服システム」のこと。

  • レイヤリング: 従来の分厚い防寒着ではなく、複数の機能的なウェアを重ね着(レイヤリング)することで、幅広い気温と活動量に対応できるように設計されています。


GORE-TEXパーカ(Gen1)のディテール


ECWCSの「Gen1」(第一世代)で採用されたアウター(レイヤー4)は、GORE-TEXを採用したことで、古着市場で**「ゴアテックスパーカ」**として絶大な人気を誇ります。

ディテール機能と特徴GORE-TEX素材防水性・透湿性・防風性を確保。マットで無骨な素材感がミリタリーらしい雰囲気。フロントのフラップジッパーの上に二重のストームフラップ(前立て)を設けることで、水の侵入を徹底的に防ぐ。大型フードヘルメットの上からでも被れるように大きく設計されており、ドローコードで絞って調整可能。脇下のベンチレーションジッパーで開閉可能なベンチレーション(通気口)が脇下に設けられ、体温調整を容易にする。肘の補強負荷がかかりやすい肘部分が二重の生地で補強されており、耐久性が高い。

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📈 GORE-TEXとテック系古着のトレンド


現代のファッションシーンにおいて、GORE-TEXは単なる機能素材ではなく、**「テック系ファッション(テックウェア)」**のアイコンとして再燃しています。

  1. ゴープコア(Gorpcore)との融合:

    • 2020年代にブームとなった「ゴープコア」とは、「Good Ol’ Raisins and Peanuts (トレイルミックス)」を略した言葉で、本来のアウトドアウェアを街着として取り入れるスタイルです。

    • このトレンドにより、PatagoniaTHE NORTH FACEARC'TERYXなどのGORE-TEXアイテム、特に黒やグレー、カーキといったモノトーンや落ち着いたカラーの古着が人気を集めています。

  2. ECWCSの再評価:

    • 軍用という背景を持つECWCSのGORE-TEXパーカは、その無駄のないデザインと高い機能性が「テック系」のムードに完璧にフィット。特にGen1、Gen2は、古着らしい野暮ったさと機能美のバランスが絶妙で、ストリートでの評価が非常に高まっています。

  3. 着こなしのコツ:

    • オーバーサイズ: 意図的にワンサイズ〜ツーサイズアップを選び、ゆったりとしたシルエットで着るのがトレンド。

    • マットな質感: ナイロンや化学繊維系のマットな質感を活かし、細身のパンツやカーゴパンツと合わせてソリッドでモダンな印象に仕上げるのが主流です。